足利事件を教訓に何をなすべきか
足利事件について、裁判所の結果を待たずに、犯人とされていた男性が釈放された。事実上の無罪に等しく、「冤罪」であったことが実証された。経緯については、事実のみを並べている Wikipedia を参照するのが良いだろう。また、弁護する側からのサイトとしては、支える会・栃木 が良いだろう。
証拠に対する疑問
さて、よくよく経過を見ると、DNA 鑑定と疑わしい自白以外は、全くの状況証拠である。弁護側の主張に沿ってしまうが、アダルトビデオを多数所有していたことや、勤めていた職場経営者の「そういえば子供を見る目つきが怪しかった」という言葉、真犯人と同じ B 型であったこと、子供と接する機会が仕事柄多かったこと、パチンコ好きであったことなどで、容疑者とされたのだった(支える会)。
つまり、男性と事件との関連は、DNA 以外は全く証拠にならなかったのだ。そして、その DNA 鑑定も今とは比べようもない精度であったことは、各メディアが指摘していることである。そして、最終的には「自白」もなされたが、自白ほど疑わしいものがないことは周知の通りである。
警察・検察・裁判所の責任
警察・検察の責任は極めて重いと言えよう。まず、上のような状況証拠だけで決めつけたこと。第二に、時期尚早論がありながら、DNA 鑑定を強行したこと。第三に、未だに責任を認めていないこと。この 3 点が挙げられるだろう。
しかし、警察や検察が間違いを犯すというのは、許されることでないにしても、裁判所が犯すのに比べれば、まだ許される方であろう。それは、警察や検察は、様々なしがらみのために適正な行動を取れないことがある(あってはならないのだが)のに対して、全く独立した組織である裁判所は、三権の 1 つとして、真実追求を任務としているからだ。今回の場合、もっとも糾弾されるべきは、真実の追求をしようとしなかった裁判所である。
日本は何のために三審制をしき、さらに再審請求まで認めているのか。何回も何回も審理をすることで、少しでも多くの冤罪を防ぐためである。今回の件では、裁判所は、頑なに、当初の DNA 鑑定に固執し、再審請求も地裁では拒否された。そして、今、裁判所のトップである最高裁は「個別の案件についてはコメントできない」として、その責任を逃れようとしている。果たして、これが、その制度の本来の目的に則したものといえるだろうか?
すでに、検察は、なぜこのようなことが起きたのかを究明するチームを作ることを発表している。当然、裁判所も、冤罪かもしれない案件に対して、見て見ぬふりをしていた(あってはならないことだ)のだから、冤罪であることが確定した今、然るべき責任を取ることが望まれるだろう。
今回の「冤罪」は、DNA 鑑定という技術に頼りすぎたことが生み出したと言われる。確かに、そうしたことも原因である。だが、当時の状況を考えてみると、物的証拠が得られていない場合、状況証拠に頼らざるを得なかったのかもしれない。そこで、当時、新技術として注目され始めていた DNA を使ったのかもしれない。その判断が適切だったとは言えないが、ある程度までは仕方のないことだったのかもしれない(もちろん、強引な自白強要といったそれ以外のことに関しては擁護するつもりは全くない)。
しかし、警察・検察・裁判所の犯した最大の罪は、17 年間も獄中から無実を訴えていた人を見過ごしていた・無視していたということである。なぜ、もっと早く、事件当時よりも格段に精度が向上した現在の DNA 鑑定で、再鑑定をしなかったのか?そこに、かつての自分たちの決定が間違っていたことを認めたくないという心があったとすれば、とんでもないことだ。
今後取られるべき対策
最近も、状況証拠だけで犯人と決めつけるような例が少なからずある。もちろん、物的証拠がどうしてもないときには、そうならざるを得ないかもしれない。だが、そうした物的証拠のない事件については、特に審理を尽くすべきだ。裁判員制度の導入で、3 日間ほどで裁くこととされているが、それで本当に大丈夫なのだろうか?
また、もっと再審請求は認められるようになっても良いのではないだろうか。三審制とはいえ、裁くのは裁判官である。そして、裁判官は絶対ではない。人間である限り、彼らもまた間違いを犯すことがある。それをなくすために、再審請求はあるのだから、もっと活用されるべきだ。
足利事件で犯人とされた男性は 17 年間、獄中生活を強いられた。もちろん、後で国家賠償が認められるだろうが、蒙った精神的苦痛は癒されることはないだろう。社会的名誉も回復されなければならない。裁判の効率化も結構だが、その人の人生がかかっていることを忘れてはならない。
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