オイストラフのチャイコフスキー

チャイコフスキーという作曲家は名旋律を生み出すという点で天才であったということは、誰も否定できないであろう。そんな彼が、交響曲第 4 番や「エフゲーニ・オネーギン」といった他の名作と同時期に書き上げたのが、彼にとって唯一となる「ヴァイオリン協奏曲」であった。

当初、ドイツ人には「馬小屋の音楽」とまで評されたが、この曲に溢れている名旋律の数々はチャイコフスキーならではである。彼の最も充実した時期に書かれたためか、作曲者自身、思い浮かんだ旋律を取捨選択できなかったのではないかと思うほど、多くの名旋律が出ては消え、出ては消えていくのである。

最近、この曲は女性によって演奏される機会が増えている。それはそれで魅力があるのだが、どこか、物足りなさを感じなくはない。そこで、旧ソ連のオイストラフである。

オイストラフの演奏は、鋭く速いテンポで音を刻む男性的力強さがあるかと思えば、甘くゆっくりしたテンポで音を刻む箇所もある。オイストラフの演奏からは、この曲が、単なる名旋律の連続ではなく、物語として聞こえる。技巧的に優れているヴァイオリニストはたくさんいるが、この難曲を飽かせることなく、1 つの物語にしてしまうのは、やはり音楽的芸術性において非常に優れていたと言うしかあるまい。

ロジェストヴェンスキーが指揮するモスクワ・フィルは、オーケストラ単独の部分でもう少し主張しても良いのではないかと思うが、全体的にオイストラフの良きサポーターの役を務めている。




なお、最後には、ショスタコーヴィッチが拍手している様子が記録されている。これがまた、名演奏の記録に花を添えているといっても良いであろう。

ソ連, 音楽

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